東京地方裁判所 昭和31年(行)106号 判決 1964年8月15日
原告 株式会社小西光沢堂本店
被告 京橋税務署長
訴訟代理人 仁科哲 外二名
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一、当事者双方の申立
一 原告
被告が昭和三一年四月二五日に別紙物件目録記載の土地を国税滞納手続により差し押えた処分は、無効であることを確認する。
訴訟費用は、被告の負担とする。
二 被告
主文同旨の判決を求める。
第二、原告の請求原因
一 被告は、昭和三一年四月二五日原告の左記滞納税金徴収のためと称して、原告所有の別紙物件目録記載の土地を差し押えた。
差押調書記載の滞納税額
事業年度
税目
本税(円)
加算税(円)
追徴税(円)
計(円)
自昭和二二年一二月一日
至昭和二三年一一月三〇日
法人税
―
三三五、五九〇
一九五、二七五
五三〇、八六五
〃二三年一二月一日
二四年五月三一日
〃
五〇六、八七七
九五、六三四
一二六、五〇〇
七二九、〇一一
〃二六年一二月一日
二七年一一月三〇日
〃
一四九、〇三〇
九、〇〇〇
―
一五八、〇三〇
〃二二年一二月一日
二三年一一月三〇日
源泉徴収税
一六、〇九九
四、〇〇〇
―
二〇、〇九九
〃二四年一二月一日
二五年一一月三〇日
〃
二四、五二〇
六、〇〇〇
―
三〇、五二〇
合計
一、四六八、五二五
二 しかしながら、被告の右差押処分は、次の理由により無効である。
1 前記差押調書記載の滞納税金は、いずれも更正、決定により納付すべきものと定められたものであるが(その額に誤りのあることは後記のとおり。)、被告は、昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税について更正による増差額に対し納税告知をしただけで、その後審査決定により一部取消しがあつたのに、その結果減額された税額については納税告知をせず、また差押調書記載の各税額につき一度も督促をしないまま突如本件差押処分をしたのであるから、旧国税徴収法(昭和三四年法律第一四七号による全面改正前の国税徴収法をいう。以下同じ。)第一〇条に違反し、右瑕疵は重大かつ明白であつて、本件差押処分は無効である。
2 差押調書に記載された滞納税額のうち、次に述べるものは、滞納の事実がなく、またその税額に誤りがある。
(一) 昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度にかかる法人税
差押調書には、加算税三三五、五九〇円、追徴税一九五、二七五円の滞納があると記載されているが、これらの滞納額は、それぞれ、二七三、〇六〇円及び一八四、六七〇円である。
(二) 昭和二三年一二月一日より昭和二四年一一月三〇日までの事業年度にかかる法人税
差押調書に記載された滞納税額は、原告の同事業年度の中間申告に対する昭和二八年一二月三一日付更正決定(以下中間更正という。)によつて納付すべきものと定められた税額であるが、被告は、原告の同事業年度の確定申告に対し、同日付で更正し(以下確定更正という。)これによつて、結局、同事業年度に関し、原告には二七二、八四三円の過誤納金があるから、これを還付する旨を決定、通知しているのであつて、滞納税金は、同事業年度については存しないのである。
(三) 昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度にかかる源泉徴収税
差押調書記載の滞納税額は、昭和二九年三月四日に通知された課税決定に基づく税額であるが、右決定は課税権の消滅時効完成後になされたものであるから無効であり、右決定に基づく税額の滞納はあり得ない。
(四) 以上のとおり、差押調書記載の滞納税額には、多数かつ多額の誤りの存するところ、滞納者は差押調書の記載によつてしか差押債権たる滞納税額を知り得ないのであるから、差押調書は民事訴訟法上の債務名義に比すべきものであり、従つて、これに前記のとおり重大な過誤がある以上、かような差押調書による差押処分は、重大かつ明白な瑕疵があつて、無効というべきである。
3 以上のところから明らかなとおり、差押調書記載の滞納税額中、真実滞納にかかる税額は、次のとおりである。
事業年度
税目
本税(円)
加算税(円)
追徴税(円)
計(円)
自昭和二二年一二月一日
至昭和二三年一一月三〇日
法人税
―
二七三、〇六〇
一八四、六七〇
四五七、七三〇
〃二六年一二月一日
二七年一一月三〇日
〃
一四九、〇三〇
九、〇〇〇
―
一五八、〇三〇
〃二四年一二月一日
二五年一一月三〇日
源泉徴収税
二四、五二〇
六、〇〇〇
―
三〇、五二〇
合計
六四六、二八〇
他方、原告には、本件差押え当時過誤納にかかる納付額で、未だ充当されていない還付金が次のとおり存した。
事業年度
税目
本税(円)
加算税(円)
利子税(円)
還付加算金(円)
計(円)
自昭和二三年一二月一日
至昭和二四年一一月三〇日
法人税
二七二、八四三
三、〇五五
三九、三九二
八二、六五八
三九七、九四八
〃二四年一二月一日
二五年一一月三〇日
〃
一九一、五三〇
―
二六、八〇〇
―
二一八、三三〇
〃二五年一二月一日
二六年一一月三〇日
〃
三五、六三〇
―
―
―
三五、六三〇
合計
六五一、九〇八
これら還付金の額は原告の前記滞納税額を上廻るのであるから、この還付金の存在を無視してなされた本件差押処分は無効である。
よつて、申立のとおりの判決を求める。
第三、被告の答弁と主張
一、請求原因第一項の事実は認める。
二、請求原因第二項につき。
1(1) 原告主張1の事実中、昭和二二年一二月一日から昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税につき、更正増差額につき納税告知をしただけで、審査決定の結果減額された残額について、改めて納税告知をしていないことは認めるが、差押調書記載の各税額について督促をしていないとの事実は否認する。
(2) 本件各滞納税金については、旧国税徴収法第九条に基き、それぞれ次表の通り適法に督促状を発してあり、従つて本件差押処分もまた適法である。
税目
区分
更正決定税額(当初のもの)
督促状発付月日
本税
加算税
追徴税
イ法人税
昭和二二年一二月一日
昭和二三年一一月三〇日
確定更正分
九〇七、一五〇
三三五、五九〇
二二六、七五〇
昭和二九年二月一八日
ロ 〃
〃二三年一二月一日
二四年一一月三〇日
中間更正分
五〇六、八七七
九五、六三四
一二六、五〇〇
〃
ハ 〃
〃二六年一二月一日
二七年一一月三〇日
確定更正分
一八〇、五二〇
九、〇〇〇
―
同年五月二六日
ニ源泉所得税
〃二四年一二月一日
二五年一一月三〇日
認定賞与分
二四、五二〇
六、〇〇〇
―
同年五月二七日
なお、原告は右表イの税金について審査決定により、減額された後の税額について、納税告知および督促の各手続が行なわれていないから本件差押えは無効であると主張するが、更正決定により納税告知および督促の各手続が行なわれた後、その税額が減額されたとしても、減額後の税額についてさらに納税告知および督促の各手続を要しないものであることは、各税法および国税徴収法の規定から見て明らかであり、原告の主張は、法律上何等根基がない。
2(一)(1) 原告の主張2の(一)につき、同事業年度分法人税にかかる加算税が二七三、〇六〇円、追徴税が一八四、六七〇円であることは認める。
(2) しかしながら、原告には同事業年度分法人税本税の滞納額が次に述べるとおり七三、一三五円であり、従つて、同事業年度分法人税に関する滞納額の合計は五三〇、八六五円となるから、合計額においては、差押調書の記載に誤りがないこととなる。
すなわち、原告は同事業年度分法人税本税として、昭和三一年一月一八日付更正の結果一、一二三、九六二円を納付すべきことになつたが、これに対して、本件差押処分当時次のとおり合計一、〇五〇、八二八円の納付、充当がなされていたので、結局、同事業年度分法人税の滞納額が七三、一三五円(端数計算による。)あつたのである。
納付、充当年月日
金額(円)
備考
イ 昭和二三年七月三一日
九三、七八六
納付
ロ 〃二四年三月一二日
二九一、四九七
〃
ハ 〃二九年一月一六日
二一八、三三〇
自昭和二四年一二月一日至昭和二五年一一月三〇日事業年度分法人税過誤納金充当
ニ 〃
六三、六一〇
右還付加算金充当
ホ 〃
三五、六三〇
自昭和二五年一二月一日至昭和二六年一一月三〇日事業年度分法人税過誤納金(一部)充当
ヘ 〃
八、九一〇
右還付加算金充当
ト 〃三〇年一月二八日
一、八九〇
自昭和二八年一二月一日至昭和二九年一一月三〇日事業年度分法人税過誤納金還付加算金充当
チ 〃三一年一月二五日
二四、七九七
自昭和二九年一二月一日至昭和三〇年一一月三〇日事業年度分法人税過誤納金充当
リ 〃三一年三月二三日
一九九、五五八
自昭和二五年一二月一日至昭和二六年一一月三〇日事業年度分法人税過誤納金(一部)充当
ヌ 〃
一一二、八二〇
右還付加算金充当
合計
一、〇五〇、八二八
(二)(1) 原告主張2の(二)の事実中、差押調書記載の滞納税額が中間更正の結果納付すべきものと定められた税額であることは認めるが、確定更正によつて原告は同事業年度について滞納はなく、かえつて、過誤納金があることになつたとの点は否認する。
(2) 原告は、同事業年度分法人税本税について、中間申告において一三四、九三三円、確定申告においては七四三、九五二円(但し、原告は中間申告との増差額の計算を誤り、増差額を六〇五、六四六円と申告した。)と申告し、中間申告額及び右確定申告増差申告額を納付した。被告は、昭和二八年一二月三一日付中間更正で、中間申告に対し本税額を六四一、八一〇円と更正し、その結果、原告は本税五〇六、八七七円、追徴税一二六、五〇〇円、加算税九五、六三四円を納付すべきこととなつたが、さらに、被告は右中間更正と同日付で確定更正をして、確定申告の本税額を九七四、六一二円と更正したため、結局、原告は滞納税額として、確定更正にかかる本税額九七四、六一二円より納付済本税額七四〇、五七九円を控除した本税二三四、〇三三円及び追徴税一二六、五〇〇円、加算税九五、六三四円(以上二つは中間更正額と同じ。)を納付すべきこととなつたのである。
もつとも、右確定更正通知書の「差引法人税額」欄及び「更正決定により納付すべき税額」欄には、赤字で二七二、八四三円と記載されているが、右数額は、次の算式により計算されたもので、税法上は徴収決定されたもので納期限を経過した税額は、一応納付されているものとして取り扱うために赤字で記載されているが、徴収決定額が実際に未納付であれば、これを減額処理し、すでに納付済みのときにのみ、これが還付されるのである。
確定更正の結果の年税額 974,612円
徴収決定済額 134,933円+605,646円+506,877円=1,247,456円
(中間申告額)(確定申告による増差額)(中間更正による増差額)
確定更正の結果減額される税額 1,247,456円-974,612円=272,844円(1円の差額は端数計算による)
ところが、原告は、中間更正による増差額を納付していないのであるから、右金額を原告に還付すべきいわれはなく、被告において昭和三一年一一月六日これを減額処理したのである。
本件差押調書に中間更正による増差額が滞納税額として誤つて掲げられているのは、右減額処理が未済だつたことによるのである。
(3) 原告は、確定更正の結果原告には同事業年度分法人税本税につき、過誤納金があつたことになり、滞納はなかつたと主張するところ、原告の右主張が誤りであることは前述のとおりであるが、なお、中間更正と確定更正の関係について説明すると次のとおりである。
中間更正は、確定更正とは別個の独立した行政処分である。すなわち、法人税法(昭和二三年法律第一〇七号による改正後のものをいう。)第二一条第一項において法人の定めた事業年度(法定事業年度)が六カ月を超える場合においては法定事業年度開始の日から六カ月間を一事業年度とみなして法人税法を適用すべき旨を規定しており、本件の場合について言うならば、昭和二三年一二月一日より昭和二四年一一月三〇日までの一法定事業年度のうち、昭和二三年一二月一日より昭和二四年五月三一日までを独立した一つの事業年度(みなす事業年度)として税法を適用するということであるから、右みなす事業年度のみについて税務計算をして、中間申告をし、これに対し同法第二九条第二項により中間更正がなされるのである。
従つて、確定更正が行なわれた場合においても、以前に行なわれた中間更正の効力は、これによつて何等影響を受けるものではなく、仮りに、確定更正によつて中間更正の効力が影響を受けるとしても、それは確定更正によつて中間更正が変更を受ける範囲に止まるに過ぎないのであつて、本件においては、中間更正における税額は六四一、八一〇円であり、確定更正におけるそれは九七四、六一二円であるから右中間更正は確定更正によつて何等変更を受けてはいない。
ただ、本件の場合のように、中間申告額、確定申告額、中間更正増差額等のすでに徴収決定された税額が、確定更正による年税額を上廻る時には、その差額を確定更正の徴収税額欄に赤字で記載し、徴収決定済み額が完納されておればこれを還付し、滞納であれば減額処理することとなるに過ぎない。この点に関する原告の主張は、確定更正の結果、中間更正は完全に消滅し、これが無かつたと同じことになるということに帰するものであるから、法が中間申告制度を設けた趣旨を無視するもので、明らかに誤りである。
(三) 原告主張2の(三)の事実は認める。
(四) 以上の次第で、本件差押調書の記載に若干の瑕疵があることは事実であるが、この程度の瑕疵の存在によつて、本件差押処分が無効となるものではない。すなわち、
(1) 昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税の滞納額に関する差押調書の記載には、その区分の記載について誤りはあつたけれども、滞納税額の合計額そのものについては何ら誤りがない。裁判例にも明らかなように、差押調書の科目又は税額の誤記は、いずれも、当該滞納処分の取り消しうべき瑕疵とはなり得ないのであるから、本件差押調書の前記のような軽微な瑕疵は、本件滞納処分の取り消しうべき瑕疵とすらなるものではなく、いわんやこれを当然無効とするような瑕疵とはなり得ないのである。
(2) 昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分の源泉徴収税の滞納額と記載された金額が、課税時効完成後の徴収決定によるものであることは事実である。
しかし、本件差押処分は数個の滞納税金の存在を理由になされたものであるが、差押処分は滞納税金毎に数個存在するものではなく、手続自体はあくまでも一個しか存在しない。この場合、原因となつた差押債権(租税債権)のうち一つがたとえ存在しなかつたとしても、差押処分の効力を左右するものではなく、差押債権のうちその存在しない債権については、当該差押によつて満足を図り得ないだけである。
(3) 差押調書に昭和二三年一二月一日より昭和二四年五月三一日までの事業年度分法人税の滞納額と記載されている金額が、確定更正による減額処理未済のため、結局、滞納額を誤つて記載したこととなつたのは事実である。
しかし、この点についても前述の場合と同様であつて、債権の数額が減縮されても減縮後なお存在する債権額の範囲内において差押えは有効であり、その瑕疵をもつて差押処分自体の効力を否定することはできない。
3(1) 原告主張3の事実は、すべて否認する。原告の滞納税額は次のとおりであり、未充当の過誤納金の還付金は無かつた。もつとも、仮りに、原告主張どおり昭和二三年一二月一日より昭和二四年一一月三〇日までの事業年度分法人税本税に二七二、八四三円の過誤納金があつたとすれば、加算税、利子税、還付加算金等の還付額が原告主張の数額になることは争わない。
差押え当時の滞納税額
事業年度
税目
本税(円)
加算税(円)
追徴税(円)
計(円)
自昭和二二年一二月一日
至昭和二三年一一月三〇日
法人税
七三、一三五
二七三、〇六〇
一八四、六七〇
五三〇、八六四
自昭和二三年一二月一日
至昭和二四年一一月三〇日
〃
二三四、〇三三
一二六、五〇〇
九五、六三四
四五六、一六七
自昭和二六年一二月一日
至昭和二七年一一月三〇日
〃
一四九、〇三〇
九、〇〇〇
―
一五八、〇三〇
自昭和二四年一二月一日
至昭和二五年一一月三〇日
源泉徴収税
二四、五二〇
六、〇〇〇
―
三〇、五二〇
合計
一、一七五、五八一
(2) 原告は、昭和二四年一二月一日より昭和二五年一一月三〇日までの事業年度分法人税の過誤納金二一八、三三〇円(前記2の(一)の(2)のハ)及び昭和二五年一二月一日より昭和二六年一一月三〇日までの事業年度分法人税の過誤納金の一部三五、六三〇円(同ホ)については、原告に対して充当の通知が行なわれていないから、未だ充当の効力を生じていないと主張するが、右通知は行なわれており、仮りに通知を欠くとしても、充当の効力を生じていることは、次に述べるとおりである。
旧国税徴収法第三一条の五に定める過誤納金等の充当とは、いずれも公法上の債権である、未納の国税及び滞納処分費に関する債権と、過誤納にかかる国税及び滞納処分費並びに同法第三一条の六の還付加算金に関する債権を、その充当適状の時にさかのぼり対等額において消滅させる行為であり、従つて、私法上の債権に関する民法の相殺とは、その性質、要件を異にしている。すなわち、充当をすることができるものは、ひとり税務署長のみであつて、相手方たる納税者はこれをすることができないのみならず、充当に対し、反対の意思を表示することは許されず、かつ、税務署長は、充当適状にあるときは、必ず充当をする義務があり、しかも充当をするに当たつては納税者に対し充当をすべき旨の意思表示を必要とせず、いわゆる、相手方のない単独行為によつてこれをすることができるのである。従つて、税務署長が、納税者に対してする充当の通知は、充当をした後におけるその事実の単なる告知に過ぎず、たとえ、これを欠いても、充当の効果の発生を何ら妨げるものではない。
しかも、右旧国税徴収法には充当の通知に関する定めがなく、従つて、原告が通知のなかつたことを理由として、その効果を争つている本件充当が行なわれた当時においては、被告は何ら充当の通知をすべき義務はなかつたのである。もつとも、その後に至り、昭和二九年一〇月国税庁訓令により、定められた管理事務提要において、初めて、充当をしたときは、その旨を納税者に通知すべきものとせられ(同提要第二編第二節第二款)、次いで同旨の規定が、その後新たに制定された国税徴収法(昭和三四・四・二〇法一四七)第一六二条に設けられるに至つたけれども、右の充当の通知はいずれの場合においても、前述のような単なる告知に過ぎないのである。
以上の理由により、原告が本件充当につき充当通知のないことを理由にその効果の発生を認めがたいとする主張は、法律上何らいわれがない。
第四、被告の主張に対する原告の反駁
一、「被告の答弁及び主張」の二の2の(一)の(2)の主張につき。
(1) 原告が同事業年度分法人税本税として、昭和三一年一月一八日付更正の結果一、一二三、九六二円を納付すべきこととなつたこと、これに対しハ及びホの充当を除き、納付、充当のあつたことは認める。
ハ及びホの充当については、原告は通知を受けていないから、充当の効力は生じていない。
(2) 被告は、同事業年度分法人税について、本税の滞納があるから、差押調書の記載は合計額においては誤りがないと主張する。しかし、請求原因の項でも述べたとおり、納税者は当該差押処分がいかなる税目、区分によつて行なわれたかは、差押調書の記載の調書によつてしか知り得ないのであるから、差押債権たる滞納税は、差押調書に記載された税目、区分にとどまると解すべきであり、従つて、差押調書に記載された滞納税額が存在しない以上、他の税目、区分の滞納が存することを理由に、右差押処分が適法であると主張し得ないことは明らかであり、本件においては、差押調書に同事業年度の法人税本税について差押えする趣旨は何ら記載されていないのであるから、本税の滞納があるとの理由で、結局、同事業年度分法人税の滞納額は合計額において正当であるとする被告の主張は理由がない。
二、同二の2の(二)の(2)及び(3)の主張につき。
(1) 被告主張の中間申告、確定申告、中間更正の事実及び原告が中間申告額及び確定申告増差額申告額のみを納付し、その余について納付していないことは認める。
(2) 被告は、確定更正の結果、原告には同事業年度分法人税の滞納額が本税二三四、〇三三円、加算税一二六、五〇〇円、追徴税九五、六三四円となつたと主張する。しかし、確定更正のような行政処分は、その告知されたところに従い効力を生ずるものというべきところ、確定更正の通知書には、被告主張どおり「差引法人税額」欄及び「更正決定により納付すべき税額」欄とも赤字で二七二、八四三円と記載されているにすぎず、これに後述のとおり確定更正は中間更正をも含めてなされることを考慮すれば、右通知書による確定更正は、原告が同事業年度分法人税本税として納付した額の中二七二、八四三円は過誤納であるからこれを還付するとの趣旨であると解すべきである。
(3) 被告は法人税法の規定を引用して、中間更正と確定更正とは別個独立の処分であつて確定更正によつて、中間更正の効力は影響を受けないと主張するが、その誤りであることは次に述べるとおりである。すなわち被告の引用する法人税法によつても、
イ 六カ月間を一事業年度とみなして、期間終了から二カ月以内に申告しなければならぬこと、
ロ 法定事業年度終了の日から二カ月以内に確定した決算に基いて(前記みなす事業年度を含めて)申告しなければならぬこと、
ハ 確定申告に対しても、中間申告に対して、課税標準を更正することができること、
が、規定されているだけであつて、確定更正がなされても、中間更正の効力は何等の影響を受けないということは、右法条の何処からも出てこない。かえつて、同法第二二条には、確定申告には、みなす事業年度(すなわち、中間申告)を含めて、普通所得金額、超過所得金額を申告すべき旨が規定されており本件中間更正と、確定更正とを対比してみても、一、八六七、五八一円の所得金額は、中間更正の一、二一四、七〇七円の所得金額を含んだものであり、確定更正の積立金額一、七一七、四一九円は、中間更正の積立金額一、一三九、六二六円を含んだものであることは、明らかである。してみれば、法人税額、差引法人税額等の欄に記載された数額もすべて、確定更正の数額は、中間更正の数額を含んでいることは、明らかといわなければならない。従つて、確定更正がなされても、中間更正は、何等影響をうけず、中間更正の納税義務が独立して、そのまま、存続するなどとは到底考えられない。
この点に関する被告の主張は理由がなく、原告のように解しても、中間申告により法定事業年度の終了前に早期に申告、納税させるという目的が達成されるから、中間申告制度の意味を無視することにはならない。
三、同二の3の(2)の主張につき。
被告が充当済みと主張する昭和二四年一二月一日より昭和二四年一一月三〇日までの事業年度分法人税の過誤納金二一八、三三〇円と昭和二五年一二月一日より昭和二六年一一月三〇日までの事業年度分法人税の過誤納金の一部三五、六三〇円については、被告から充当の通知のないことは前述のとおりである。
被告は、充当は納税者に通知しなくてもその効力を生ずると主張するが、どの還付金がどの年度のいかなる滞納税金に充当されたかを納税者に通知すべきことは当然であり、納税者に何も知らせなくとも、充当の効力を生ずると解すべき理由はない。
第五、証拠関係<省略>
理由
一、督促を欠くとの点について。
原告は、問題の差押えの基礎となつた滞納税額につき、差押え前に督促手続がとられていないと主張するが、右主張にそう証人小西よし子の証言は措信し難く、他に右事実を認むるに足る証拠はなく、かえつて、いずれも成立に争いのない乙第四号証の二、同第一五号証の二、同第一八号証の二によれば、被告備付けの原告に関する徴収簿には、昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税についての確定更正による増差税額及び昭和二三年一二月一日より昭和二四年五月三一日までの期間の法人税についての中間更正による増差税額については、徴収簿督促月日欄にそれぞれ昭和二九年一月一八日と記載され、収納未済歳入額欄の金額頭部に<督>の印が押捺されており、昭和二六年一二月一日より昭和二七年一一月三〇日までの事業年度分法人税についての確定更正による増差税額については、徴収簿記事欄に昭和二九年五月二六日と記載され、その横欄外に<督>の印が押捺されており、さらに昭和二四年一二月一日より昭和二五年一一月三〇日までの事業年度分源泉徴収税についての課税決定額については、延滞加算税額欄に5/27始期昭和二九年六月八日なる記載があり、収納未済額欄の金額頭部に<督>の印の押捺があることが認められ、これらによれば、右各税額につき被告主張の年月日にそれぞれ督促がなされたものと認められる。
なお、原告は、昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税については、確定更正が審査決定により一部取り消されたのに、右取消し後の残額についてあらためて納税告知、督促が行なわれていないと主張し、納税告知、督促があらたに行なわれていないことは当事者間に争いがないところ、確定更正が審査決定により一部取り消された場合、確定更正に基づく租税債務が取消しの限度で消滅し、納税告知、督促もその範囲で効力を失うことは当然であるが、その余については、租税債務の確定及びこれに対する納税告知、督促の効力はなお存続するものであつて、一部取消しがあつた場合は、当初よりあらためて課税、徴収の手続を進行すべきものと解することはできないから、この点の原告の主張も理由がない。
二、差押調書の記載に誤謬があるとの点について。
原告は、差押調書に記載された滞納税額の記載は、事実に反すると主張するので、以下順次これを判断する。
1 昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税につき、差押調書には、滞納税額として加算税三三五、五九〇円、追徴税一九五、二七五円と記載されているが、これらの滞納額は、それぞれ二七三、〇六〇円及び一八四、六七〇円であることは当事者間に争いがない。
被告は、同事業年度滞納税額として、法人税額七三、一三五円があるから、合計額において変動はないと主張するが、租税滞納処分における差押債権としての租税債権は、差押調書に記載されたところに従つて判断すべきところ、法人税本税とその加算税、追徴税とはその発生原因をそれぞれ異にするものであるから、各別に差押債権となるものと解すべきであり、従つて差押調書に記載されていない法人税本税は、差押債権となつていないのであつて、他に法人税本税の滞納があるとの理由で、合計額において誤りがなく、差押えが違法でないとする被告の主張は採用できない。
2 差押調書に昭和二三年一二月一日より昭和二四年五月三一日までの期間の法人税に関する中間更正による本税五〇六、八七七円、加算税九五、六三四円、追徴税一二六、五〇〇円が記載されていることは、当事者間に争いがない。原告は、昭和二三年一二月一日より昭和二四年一一月三〇日までの事業年度分法人税については、確定更正の結果、滞納税額はないこととなり、反対に本税につき二七二、八四三円の過誤納金があることになつたと主張するのに対し、被告は、確定更正により本税額が二三四、〇三三円に減額されたに過ぎないと主張するので、この点につき判断する。
原告が、同事業年度分法人税中間申告において本税額を一三四、九三三円と申告し、確定申告においては、これを七四三、九五二円と申告したこと、右中間申告額と確定申告増差額を納付するに当たり、原告は、増差額が六〇九、〇一九円であるのにこれを六〇五、六四六円と誤つて計算したため、中間申告及び確定申告分として、七四〇、五七九円を納付したこと、被告が昭和二八年一二月三一日付で、中間申告に対し本税額六四一、八一〇円(更正増差額五〇六、八七七円)、追徴税額一二六、五〇〇円、加算税九五、六三四円と中間更正したことは、当事者間に争いがない。いずれも成立に争いのない甲第三号証、乙第四号証の二、同第二〇号証の二と証人細谷礼光の証言によれば、被告は、右中間更正と同日付で、さらに同事業年度分法人税本税額を九七四、六一二円と確定更正し、その結果、原告の同事業年度法人税本税の滞納額は、右年税額九七四、六一二円より前記納付済額合計七四〇、五七九円を差し引いた二三四、〇三三円となつたことが認められる。原告は、確定更正の通知書(甲第三号証)の「差引法人税額」欄及び「更正決定により納付すべき税額」欄に、ともに、赤字で二七二、八四三円と記載されているところから、確定更正により二七二、八四三円が過誤納金として還付されることとなつたと主張するが、前記甲第三号証、乙第四号証の二、同第二〇号証の二と細谷証人の証言に、当事者間に争いのない中間申告、確定申告、中間更正の事実をあわせて検討すると、二七二、八四三円が前記各欄に赤字で記載されたのは、原告に対しては、中間申告額一三四、九三三円、確定申告増差額六〇五、六四六円(原告申告額)及び中間更正増差額五〇六、八七七円の合計一、二四七、四五六円の納付が確定しているところ、確定更正による年税額が九七四、六一二円であるため、納付が確定した税額が確定更正による年税額を超え、確定更正によつて新らたに追加して納付すべき税額はなく、かえつて右差額二七二、八四三円(一円の差額は、端数計算処理によるものと認められる。)だけ多く納付が確定しているところから、確定更正の結果右金額だけ納付確定済み額が減額することを示すために赤字で記載されているものであつて、従つて、赤字で記載された二七二、八四三円は、納付確定済み額との対比で赤字となること、すなわち減額されることを示すにとどまり、原告主張のように現実に納付された金額と対応するものではなく、従つて、納付確定済み額が現実に全額納付されていれば、右赤字分だけ還付されることとなるが、未納の場合は、納付すべき金額が計数上減額されるにすぎないものと認められる。もつとも、被告の確定更正の通知書(甲第三号証)には、「法人税額」欄に年税額九七四、六一二円の記載のほか赤字で五〇三、五〇三円の記載があり、「納付の確定した当期分の基本税額」欄には、黒字で五〇三、五〇三円及び七四三、九五二円と記載されているところ、この五〇三、五〇三円なる数額は、原告の確定申告額七四三、九五二円より原告申告の確定申告増差額六〇五、六四六円を差し引いた金額一三八、三〇六円と中間更正額六四一、八一〇円との差額に合致し(一円の相違は、端数計算処理によるものと認められる。)、従つて原告の確定申告増差額との対比において、中間更正増差額を算出したものと認められるところであるから、右数額は、「納付の確定した当期分の基本税額」欄に、原告の確定申告額七四三、九五二円とともに黒字で記載すれば足り、これを「法人税額」欄に赤字で記載すべきものでなかつたことは明らかであつて、この点において被告の確定更正の通知書に若干の過誤の存したことは否定できないが、その余については、右通知書に誤りはなく、通知書全体、とりわけ確定更正における所得金額、積立金額を申告額と対比し、また税率を乗じて見れば、右通知書が前認定の趣旨を示すものであることは容易に看取し得るところであつて、右過誤をとらえて確定更正の効力を云々するに足りず、ましてこの点をもつて、原告主張のように、右通知書が原告の現実に納付した金額より二七二、八四三円を過誤納金として返還する趣旨であるということはできない。なお、前記証人小西、同細谷の証言によれば、小西証人が東京国税局協議団に勤務する細谷証人を訪ね、私的に右通知書等の趣旨の説明を求めた際、細谷の説明が不十分であつたことから、小西は確定更正により二七二、八四三円が過誤納金として還付されるものと誤解したことを認めることはできるが、右事実は、確定更正の効力を左右すべきものとは解し得ない。また、原告は、確定更正は中間更正の対象とする期間の収益を含む事業年度について行なわれるものであるから、中間更正によつて新らたに納付税額が定められていても、確定更正の納付税額欄が赤字であれば、中間更正の効力は失なわれ、確定更正の赤字額が過誤納となると主張するが、確定更正が中間更正の対象とする期間を含む事業年度の収益を対象とするということと、確定更正、中間更正の各処分がそれぞれ独立した処分としての効力を保有するかどうかとは一応直接の関係はなく、当時の法人税法(昭和二三年法律第一〇七号による改正後のものをいう。)第二一条第一項によれば、法人の定めた事業年度が六カ月を超える場合には、その事業年度開始の日から六カ月を一事業年度とみなして法人税法を適用すべきこととされているのであるから、「みなし事業年度」にかかる中間申告、中間更正は、確定申告、確定更正と一応独立にその効力を有し、確定更正の効力に中間更正の効力が吸収されるといつたものではなく、たゞ、確定更正における所得金額、法人税額が中間更正額を下廻る場合には、その限度で中間更正の効力は影響を受けるに過ぎないものと解すべきであつて、原告主張のように、確定更正において納付税額が赤字で示されれば、中間更正のいかんにかかわらず、右数額は過誤納として還付さるべきものであるということはできない。
以上の次第で、原告の昭和二三年一二月一日より昭和二四年一一月三〇日までの事業年度分法人税の滞納額は、被告主張のとおり本税二三四、〇三三円、追徴税一二六、五〇〇円、加算税九五、六三四円であつたと認められ、右認定に反する証人松本憲一の証言及び甲第三八号証の記載は措信できず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
3 昭和二六年一二月一日より昭和二七年一一月三〇日までの事業年度分法人税について、差押調書記載のとおり本税一四九、〇三〇円、加算税九、〇〇〇円の滞納のあつたことは、当事者間に争いがない。
4 昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分源泉徴収税の滞納額として差押調書に記載された本税一六、〇九九円、加算税四、〇〇〇円は、消滅時効完成後の課税決定に基づくもので、滞納税額とならないものであることは、当事者間に争いがない。
5 昭和二四年一二月一日より昭和二五年一一月三〇日までの事業年度分源泉徴収税として差押調書に記載された本税二四、五二〇円、加算税六、〇〇〇円が滞納されていたことは、当事者間に争いがない。
以上の事実によれば、差押調書に記載された滞納税額の一部に誤りがあり、また滞納のない税額が含まれていることは明らかであり、被告の差押処分に疎漏のあつたことは否定できないが、数個の租税債権を差押債権として行なわれた差押処分は、各租税債権ごとに数個の差押処分が競合するものではなく、差押処分は一個であり、従つて、原因となつた租税債権の一部に数額の誤りがあり、またはそれが存在しない場合、その限度で当該差押処分により債権の満足を図り得ないことはいうまでもないが、そのことによつてたゞちに差押処分の効力が左右されるものではなく、たゞ、差押調書の記載の誤りが大きく、正当滞納税額に比し差押物件の価格が著しく高額で、もし差押調書に記載された滞納税額に誤りのあることがわかつておれば、当該物件を差し押えることなく、他の適当な物件を差し押えたであろうことが明らかであるというような特段の事情がある場合にのみ、当該差押処分の無効を惹起するものと解すべきところ、本件差押調書に滞納税額として記載された金額の合計は一、四六八、五二五円であるが、このうち真実滞納にかかる額は、前認定のところから明らかなように合計一、一〇二、四四六円であつて、その誤差がとくに大きいというほどではないこと、及び正当滞納税額の満足を得るため他にいつそう差押えに適する財産を容易に発見し得たというような特段の事情があることにつきなんらの主張、立証がないことから考えれば、前認定のように差押調書の滞納税額の記載の一部に誤りがあつたということだけで、たゞちに、本件差押処分に右述のような特段の事情に基づく無効原因があるということはできないものと解すべきである。
三、過誤納金の還付金があつたとの点について。
原告は、滞納税額を上廻る還付金があつたと主張する。
原告が過誤納金と主張するもののうち、昭和二三年一二月一日より昭和二四年一一月三〇日までの事業年度分法人税については、原告主張のような過誤納金が存在しないことは、先に二の2で判断したとおりである。
原告は、さらに、昭和二四年一二月一日より昭和二五年一一月三〇日までの事業年度分法人税につき本税一九一、五三〇円、利子税二六、八〇〇円、昭和二五年一二月一日より昭和二六年一一月三〇日までの事業年度分法人税につき本税三五、六三〇円の過誤納にかかる還付金があると主張し、被告は右過誤納金は、昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税の滞納本税額に充当したと主張するところ、成立に争いのない乙第四号証の二によれば、昭和二九年二月二七日右充当がなされていることを認めることができる。原告は、充当の通知がないと主張し、前記小西証人は同趣旨の供述をするが、同証人自身原告の計理関係を担当していたものではなく、原告宛郵便物のすべてを了知していたものでないことを自認しているところよりすれば、右証言はたゞちに措信できないし、仮りに同証人の証言のとおり、充当通知がなく、充当の効力を生じていないとしても、未充当金額は合計二五三、九六〇円であり、しかも、右金額が充当されていなければ、それだけ昭和二二年一二月一日より昭和二三年一一月三〇日までの事業年度分法人税本税の滞納額が増加することとなり、右法人税は差押債権になつていないことは前記のとおりであつて、原告の側において、右滞納にかかる法人税本税を差しおいて、任意に、差押債権とされた滞納税額に還付金を充当することは許されるものではなく、かえつて、被告の側において、あらためて、右未納にかかる法人税本税にこれに充当することが許されるものと解すべきことなどから考えれば、右の還付金の存否によつて、本件差押処分の効力が影響を受けるものと解することはできない。
四、結論
以上の次第で、本件差押処分には、原告主張のような無効原因はなく、その他右処分の無効を認むるに足る主張、立証はないから、原告の本訴請求は失当であつて、棄却すべきものであり、訴訟費用につき、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 白石健三 浜秀和 町田顕)
(別紙物件目録省略)